4%ルールの前提にある問題点

4%ルールは、資産を計画的に使うための目安として知られていますが、その根拠となる前提条件には注意が必要です。ここでは、次の3つの問題点にしぼって説明します。

1. 投資対象が限定されている

  • このルールを紹介した論文では、次の2つの資産しか使っていません:
    • S&P 500:アメリカの大企業500社の株式
    • 長期優良社債(long-term high-grade corporate bonds):信用力が高いアメリカ企業の長期債券
  • REIT(不動産投資)、新興国株、小型株などは含まれておらず、投資先が偏っています。

2. 市場全体(市場平均)を反映していない

  • S&P500と社債だけでは、実際の投資家が持つ多様な資産をカバーしていません。
  • 全世界の株式や債券を含めた「市場全体の平均(時価総額加重)」とは異なります。
  • そのため、この4%ルールは「特定の条件でうまくいった結果」であり、一般化は難しいです。

3. 古いデータ(1997年まで)しか使われていない

  • 論文で使われたデータの期間は、1926年〜1997年です。
  • 出典:Cooley, Hubbard, and Walz, "Sustainable Withdrawal Rates from Your Retirement Portfolio", 1998年
  • 1998年以降の大きな出来事(ITバブル崩壊・リーマンショック・コロナショックなど)は含まれていません。
  • 現在の金利・インフレ・世界経済の状況とは大きく異なり、将来にもそのまま当てはめることはできません。

このサイトでは、実際に選んだ各銘柄について、1997年以降の市場データに基づいて分析できます。
過去の現実の相場変動をもとに、より現在に近い視点からポートフォリオの持続性を評価できます。

まとめ

問題点 内容
投資対象の偏り S&P500と長期優良社債のみ
分散性の欠如 市場全体(全世界)ではない
古いデータ 1926〜1997年のみで、最近のショックを含まない

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